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この研究成果が公刊されたのち、阪神・淡路大震災を経て、冒頭のべたような多くの調査研究が行われたが、市民セクターをめぐる動向はそれだけではない。
自治体レベルで長期計画を策定する場合においても、自治体と市民との協働をうたうところが増加している。震災の被害を受けた神戸市では、復興計画において、「協働のまちづくり」の推進を盛り込んでおり、その柱のひとつとして、自主性と想像性あふれるボランティア活動の振興を掲げ、ボランティアとのパートナーシップ、ボランティア間のネットワークづくりを推進することとしている23)。また、1996年11月にはNPOと行政・企業とのパートナーシップを強化する目的で「日本NPOセンター」が設立された。このように、市民セクターと行政・企業、市民セクター間のネットワークの強化が当面する最大の課題であるといってよい。

 

4. おわりに一市民セクターと行政との関係の類型−

 

前節までにおいて、欧米および日本における市民セクターの研究動向を簡単にまとめてみた。そこでは、市民セクターと行政とのネットワーク、市民セクターの組織的強化の必要性が明らかになった。それでは、市民セクターと行政の関係はどのようにあるべきなのであろうか。この点に簡単にふれて、本章を閉じることにしたい。
海外のある共同研究では、サード・セクターと政府との関係をつぎのように図示している(図4参照)。それぞれの主体の機能を提供および財政に分離したうえで、「政府主導」「二元」「協同」「サード・セクター主導」に類型化している。ここでは「協同モデル」が注目される。このモデルにおいては、財政的うらづけを政府が行い、サービスの提供をサード・セクターにゆだねるというものである。ここでは、やや視点を変えて、政府と市民セクターの関係を分析する視点を提示したい。それは、「協働」「分担」「競合」「先行」の4つの概念に分類される。
第1に「協働」とは、政策レベル(あるいはプログラムレベル)において、双方がアクターとして認知され、協力関係にあるばあいである。このばあい、先の「協同モデル」と異なり、財政および提供が混合していることも想定される。
第2に「分担」である一これは、「協働」の一類型ということもできるが、市民セクターと行政の役割分担が明確化されているばあいである。これは、財政および提供が明確化されているということだけでなく、たとえば、実施過程における役割の明確化なども想定

 

 

 

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